戦い
本当にあいつと手を組むのかよ。
じゃあどうすんだよ。
一度裏切ったあいつの手を借りるのは嫌だ。私にもそういう思いはあった。しかし、伊周を救う方法はこれしかないんだ。
俺だってあいつとなんか組みたくないよ。でも、俺たち二人でなんかできるのかよ。頼むよ、ここは一度飲み込んでくれ。
分かった。お前がそこまでいうならな。ただ警戒は怠るなよ。
そして裏切り。
嵌められる。
■
穏やかな風が吹く公園で、ただ一人立ち尽くす男。目的もない。夢もない。この世界に生きる意味を持たない私は、疲れ果てていた。何もやる気が起きない。息苦しさを感じていた。
とはいえ、死に至るほど絶望し尽くしてもいなかった。日の当たるベンチに腰掛ける。ほんのりと熱を持ったベンチが背中を温め心地よい。これは一つの幸福なのだろうと思った。生きていたいという本能は感じられる。しかし、生き抜いていく気力は空っぽに等しいように思われた。
どれだけの時間が過ぎただろうか。呆然としている中で影が伸びていることに気がついた。学校帰りの子供達の声はまだ聞こえている。
「俺さ、女の子に好かれたいんだ」
「なんだ急に。好きな子でもできたのか」
「いや、そういうわけではないんだが、なんていうかモテたいのよ。そういうお年頃ってやつかな」
男子の声が聞こえる。会話の内容からして、小学生にしてはあまりにませているように思われた。中学生くらいだろうか。気になって声の方を向いてみた。
一人は非常に背が高く痩せ型。もう一人は低くはないが際立って高くもなく、顔は少しまんまるしているようだが、太っていると言えるほどでもなかった。