戦い

本当にあいつと手を組むのかよ。

じゃあどうすんだよ。

一度裏切ったあいつの手を借りるのは嫌だ。私にもそういう思いはあった。しかし、伊周を救う方法はこれしかないんだ。

俺だってあいつとなんか組みたくないよ。でも、俺たち二人でなんかできるのかよ。頼むよ、ここは一度飲み込んでくれ。

分かった。お前がそこまでいうならな。ただ警戒は怠るなよ。

そして裏切り。

嵌められる。

 

よくできた子

ささやかな楽しみを汚される瞬間、人はフッと怒りを覚える。例えば一息ついた後に飲む日課のコーヒータイムが削られるとき。急に迎えに来て欲しいとか、買い出しを頼まれたりとか。いや別に嫌じゃない。むしろ外に出るのもそれなりに楽しい。しかし、タイミングというものがある。ポットで湯を沸かしさあ、飲むぞと心が浮き立つ瞬間に用事がプッシュポップすると怒りの感情がその弾みではみ出してしまう、ただそれだけだ。

「でも人の役に立てることは素晴らしいことだよ。それが喜びなんだ」

そう思えたらいいなと。それこそがよくできた子だ。フリではなく天然で。負の感情が生まれない、プリキュアのような存在に、私はなりたい。

穏やかな風が吹く公園で、ただ一人立ち尽くす男。目的もない。夢もない。この世界に生きる意味を持たない私は、疲れ果てていた。何もやる気が起きない。息苦しさを感じていた。

とはいえ、死に至るほど絶望し尽くしてもいなかった。日の当たるベンチに腰掛ける。ほんのりと熱を持ったベンチが背中を温め心地よい。これは一つの幸福なのだろうと思った。生きていたいという本能は感じられる。しかし、生き抜いていく気力は空っぽに等しいように思われた。

どれだけの時間が過ぎただろうか。呆然としている中で影が伸びていることに気がついた。学校帰りの子供達の声はまだ聞こえている。

「俺さ、女の子に好かれたいんだ」

「なんだ急に。好きな子でもできたのか」

「いや、そういうわけではないんだが、なんていうかモテたいのよ。そういうお年頃ってやつかな」

男子の声が聞こえる。会話の内容からして、小学生にしてはあまりにませているように思われた。中学生くらいだろうか。気になって声の方を向いてみた。

一人は非常に背が高く痩せ型。もう一人は低くはないが際立って高くもなく、顔は少しまんまるしているようだが、太っていると言えるほどでもなかった。